2013年11月10日日曜日

写真を見るということ

「また写真展?好きだね~」と言われた。


絵画でもなく、イラストレーションでもなく、なぜ写真なのか。
しかも、「撮る」のでなく「見る」なのか。


言ってしまえば写真なんて誰でも撮れるし、今やケータイでも撮れる。


それでも、なんだか興味をひかれるのは、やっぱり個性が映りだすのだ写真は。


撮影者の、対象や世界そのものを見る目、視界、まなざし。その奥にある思想。
写真作品は撮影者の世界観そのものなんだ。
世界観の中からフォーカスされた一部分。
それが単なる記録写真だろうと記念写真だろうとスナップ写真だろうと。
その人に見えている世界からしか、テーマを選び取ることはできないから。
撮影者が何を見ているのか、それが浮き彫りになる。


ならばそれを見る楽しみとはなにか。


見ることで、好きとか嫌いとか、なんか気になるとか、感じるものがあったりする。
自分の中の感覚という判断基準によって選ばれるそれらが、自分の輪郭の補助線になっていく。
そしてまた、自分に無かった視点や、認識していなかった世界観を疑似体験することで、自分の中の世界認識に新たな視点・選択肢を加えるということにもなる。


とはいえ、まあ、言ってしまえば結局は、単に好きという。


写真展「植田正治のつくりかた」に行ってきた


「生誕100年!植田正治のつくりかた」
2013年10月12日(土)~2014年1月5日(日)
東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/


9日に、この写真展を見に行ってきた。

植田正治さん。好きな写真家さんで、有名な方だから方々でよく写真展が開催されるので、いける範囲でちょくちょく足を運んでいる。
今年は生誕100年ということもあって、この後は恵比寿の写真美術館でも写真展の開催が控えていて楽しみだ。


今回の写真展を見て思ったことは、
絵画的な画面構成や手法、感性で作為をもって撮られた演出写真に定評のある写真家さんではあるのだけれど。
私は何よりこの写真家さんの、家族や近所の子供たちや地元の風景へ向けるまなざしが好きなんだなぁということだった。


娘さんの作文とともに飾られた家族写真は、なんとも微笑ましかった。


そして、晩年に撮られたという花の写真。
実際に見て触れても美しい素肌的でひんやりとなめらかな花びらの質感が、本当に生々しく写し取られていると感じた。


展示の最後に飾られた3枚の写真には、何とも言えない寂寥感を掻き立てられ。
一番最後のパネルに書かれた、亡くなる数日前に撮られたものらしいという説明に、数歩戻ってもう一度じっくり見なおした。


写真を愛し、写真することを心から楽しむ。
それは本来の意味でのアマチュア精神。
『amateur(アマチュア)とは「愛する人」という意味のラテン語 amator(アマートル)が語源』
それそのもの、といった人となりを感じる写真展だった。


そうそう。
あと、ファッショングラビアやCDのジャケット写真やPVの撮影など、そのチャレンジ精神も好きなところのひとつかもしれないな。
展示ではスクリーンにPVが流されていた。いきなりロックが聞こえてきて、ちょっと驚いたけど。




ARBの「After'45」のPV



福山雅治「HELLO」のCDジャケット


どちらを見ても、植田さんらしい。